近世(江戸時代)民謡の最大の特徴は、その教訓的内容にあると言ってよい。それらのうちの多くは、児童向けに親への孝を説いた歌謡で占められる。このような内容の歌は一般的には儒教的道徳によるものと受け取られるが、実はこの時期には禅宗を中心とした仏教や心学の立場から創作されたものが圧倒的に多い。本稿では近世民謡へのひとつのアプローチとして、江戸時代中期の禅僧で臨済宗中興の祖とも仰がれる白隠慧鶴作の和讃『施行歌(せぎょううた)』をとりあげる。まず、その基礎的研究として諸本を調査した結果、全体を四つの系統に分類できることが判明した。そこで各系統ごとに本文を掲出し、比較検討を試みた。The biggest character of Kinsei-minyou(folk songs in the Edo era)is the moral words of songs.Most of the folk songs preach children duty to their parents.It has been understood that the content of these songs was influenced by Confucian moral,but the majority of the folk songs were written from the viewpoint of Zen in Buddhism and Singaku.“Segyou-uta”,which was written by Hakuin Ekaku,is treated in this report.Hakuin was a Zen priest in the Edo era.At first,I...